エスワティニ王国
その名を聞いても、多くの人にとってはまだ馴染みの薄い国かもしれません。アフリカ南部に位置し、かつてはスワジランドと呼ばれていたこの小さな王国には、手つかずの自然や独自の伝統文化が色濃く残っています。
しかし一方で、「エスワティニはやばい」「女性一人では危険」といった声もネット上では散見され、旅行を検討している人の不安を煽る材料になっているのも事実です。
この記事では、エスワティニ王国の政治体制や社会情勢、治安問題に至るまでの“リアル”を、2025年最新の視点で徹底解説します。
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エスワティニ王国が「やばい」と言われる理由とは?

美しい自然と穏やかな人々が暮らすイメージとは裏腹に、エスワティニ王国には近代国家とは言い難い側面がいくつも存在します。
特に、王政を中心とした政治体制や医療インフラ、ジェンダー観に関しては、現代の感覚とは大きくかけ離れており、「やばい」と感じる要因がいくつも重なっています。
この章では、世界中の人々がこの国をどう見ているのか、そして実際に何が問題視されているのかについて掘り下げていきましょう。
国王が国家予算の一部を私的流用し続けている
現在のエスワティニは、アフリカで最後の“絶対君主制”を敷いている国です。
国王ムスワティ3世は、国のあらゆる権力を掌握しており、政府のトップでありながら、議会の決定すら最終的に覆す力を持っています。
そして何より問題なのは、国家予算の一部を“私的な贅沢”のために使っているという報道が後を絶たないことです。
彼は自家用ジェット機を所有し、豪華な宮殿に暮らし、15人以上の妻を持ち、それぞれに豪邸を与えているとも言われています。
一方で、国民の約60%が貧困層とされ、水道・電気のインフラも未整備な地域が多く存在しているという現実とのギャップが、「やばい国」とされる背景の一つになっています。
このような権力の集中と富の偏在がもたらす社会的不満は、やがて暴動やデモに発展することもあるため、旅行者にとっても間接的なリスクとなり得るのです。
成人の27%がHIV感染しており医療体制が極めて脆弱

エスワティニ王国が抱える最大級の社会問題のひとつが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染率の異常な高さです。
2025年現在、成人のHIV感染率は約27%。これは世界でも最悪レベルの水準であり、事実上、国民の4人に1人がHIV陽性ということになります。
これは医療だけでなく、教育・経済・家庭といった社会全体に大きな影響を及ぼしています。
感染者の多くは若年層であり、働き盛りの世代が次々と病に倒れてしまうため、労働力の喪失→経済低迷→貧困の連鎖が止まらないという悪循環に陥っているのです。
それに加えて、医療体制そのものも非常に脆弱です。都市部の大病院でさえ、医薬品や設備の不足が深刻であり、地方に行けば簡単な処置すら受けられないケースが珍しくありません。
旅行者が体調を崩した場合でも、十分な医療が受けられない可能性が高いという点は、渡航前に必ず認識しておくべきです。
また、女性にとってはHIV問題がより深刻です。性教育が不十分な上に、ジェンダーの格差からコンドームの使用が拒否されるケースもあり、結果として感染が女性に集中してしまっている現状があります。
一夫多妻制と伝統儀式が女性の権利意識が低すぎる
エスワティニ王国は、法律上も文化的にも一夫多妻制が認められている数少ない国のひとつです。国王ムスワティ3世自身が15人以上の妻を持ち、その一部を“伝統儀式”で選ぶという行為も堂々と行われており、それが国の文化的アイデンティティとされている側面すらあります。
このような状況では、当然ながら女性の権利は極めて限定的です。
たとえば、以下のような現実が存在します。
- 女性が「断る権利」を持たない社会通念
- 結婚において女性側の意志が軽視されることが多い
- 性的同意の概念が社会的に浸透していない
とくに有名なのが、毎年8月から9月にかけて行われる「リード・ダンス(Umhlanga)」と呼ばれる伝統的な儀式です。
これは若い未婚女性たちが色とりどりの民族衣装をまとい、王宮前でダンスを披露するイベントで、国王が新たな妻を選ぶ機会とも言われています。
一見、華やかで観光要素の強い行事に見えますが、女性の自己決定権やプライバシーが尊重されているとは言い難い側面も多く、外から見ると“女性を公に品定めする場”として違和感を覚えることもあるでしょう。
女性旅行者がこのような文化に無防備に触れた場合、現地男性との価値観の違いやジェンダー観のギャップに戸惑うこともあります。だからこそ、“リスペクトしながらも一定の距離を保つ”ことが必要です。
民主化デモがたびたび弾圧され、言論の自由が制限されている

エスワティニ王国の政治体制は、現在も国王による絶対君主制が維持されており、これは世界的にも非常に珍しいケースです。
国民による首相の直接選挙は存在せず、議会の構成員すら国王が任命する仕組みが残されています。
このような政治構造に反発し、民主化を求める声は以前から国内に存在しています。特に近年は、若者を中心にSNSを通じて民主化要求の機運が高まり、街頭での抗議デモが頻発するようになりました。
しかし、それに対する政権の対応は極めて強硬です。
多くのデモは警察や軍によって力で鎮圧されており、ゴム弾や実弾が使用されたとの報告も複数存在します。
また、政府に対して批判的なメディアや個人が逮捕・拘束される例も少なくなく、言論の自由が大きく制限されているのが現状です。
こうした情勢は、旅行者にとっても無関係ではありません。
例えば、たまたま滞在中にデモに遭遇し、それをスマートフォンで撮影しただけで「反体制的な行為」と見なされて警察に拘束されるリスクがあるのです。
そのため、エスワティニに滞在中は以下のような注意が必要です。
- 政治的な話題には極力触れない
- デモや人だかりには近づかない
- 撮影やSNS投稿には細心の注意を払う
この国においては、“自由”の定義自体が日本とは異なるという前提を忘れてはいけません。
貧困層の拡大で治安が不安定化している背景がある
エスワティニ王国は、自然豊かで資源もある国ですが、その恩恵を享受できているのは一部の富裕層と王族に限られています。
現実には、国民の約60%以上が1日2ドル以下で生活する極度の貧困状態にあり、その生活格差が社会の不安定さを生み出している要因になっています。
教育の機会が限られ、若年層の失業率も高く、将来に希望を持てない若者たちは、やがてストリートでの非合法活動や軽犯罪に手を染めざるを得ない状況に陥ることもあります。
特に都市部では、外国人=裕福と見なされるため、観光客がスリ・置き引き・ひったくりのターゲットにされることが増えているのです。
こうした治安悪化の要因は、犯罪の巧妙化にもつながっており、
- 「親切を装った道案内」からの金銭要求
- 夜間の路上での集団による囲い込み
- タクシーを装った強盗事件
など、犯罪が日常の中に溶け込んでしまっている現実があります。
さらに、政府によるセーフティネットが機能していないため、犯罪に走った人々が再犯を繰り返すリスクも高いのが現状です。その結果、治安の回復には至らず、旅行者にとっては「街全体の空気がどこか緊張感をはらんでいる」と感じられるケースもあるでしょう。
つまり、エスワティニ王国では、制度的な貧困と不安定な治安が密接に結びついており、旅行中にもリスクとして意識しておく必要があるということです。
日本人旅行者がエスワティニで注意すべき理由

アフリカの小国・エスワティニは、日本人観光客にとってもまだ訪問者の少ない場所のひとつです。
その分、現地の人々にとって日本人は目立ちやすく、特別な存在と見なされやすいという特徴があります。
良い意味でも悪い意味でも注目を集めやすく、旅行者の立場では思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
ここでは、実際に報告されている日本人の被害例や注意点を踏まえて、エスワティニで特に気をつけたいリスクについて解説していきます。
首都ムババーネ周辺での強盗・スリ被害が報告されている
エスワティニの首都ムババーネは、国内でも比較的発展している都市のひとつですが、だからといって治安が良いとは限りません。現地の警察によると、近年では外国人観光客を狙ったスリやバッグのひったくり、路上での強盗事件が増加傾向にあります。
特に危険なのは次のようなシチュエーションです。
- 歩道に停車した車から突然降りてきた男性にバッグを奪われる
- 市場での“押し合い”に紛れて財布やスマホを抜き取られる
- ATM付近で現金を狙った不審者に後をつけられる
多くのケースで共通しているのは、「日本人が無警戒すぎる」と見られていた点です。
日本国内での感覚のまま過ごしてしまうと、知らぬ間にターゲットにされやすくなるため、現地では周囲への注意を怠らない姿勢が重要です。
日本人女性が現地男性からストーキング被害を受けた事例がある
女性の単独旅行者に対しては、より深刻な問題が報告されています。
特に目立つのが、現地男性による執拗なつきまといやストーキングまがいの行動です。
過去の事例では、宿泊先のスタッフやタクシー運転手、現地ツアーのガイドなど、“一見親切”に見える人々が突然態度を変えるケースが確認されています。
メッセージを繰り返し送ってきたり、同行を強要されたり、断ると激昂したりと、日本人女性が「対処に困る」状況に追い込まれた報告もあります。
この背景には、日本人女性に対して“恋愛に積極的”“裕福”といった勝手なイメージが根付いていることが挙げられます。現地文化と価値観の違いを理解した上で、一定の距離感を保った付き合い方を意識することが非常に大切です。
夜間に外出した日本人が検問で不当拘束されたケースもある
エスワティニでは、政府による治安維持という名目で、都市部や幹線道路に「臨時検問所」や「移動チェックポイント」が頻繁に設けられています。
この検問制度は、もともとは武器や違法薬物の取り締まりを目的としたものですが、外国人に対しても強制的に立ち止まらせて所持品や身分証明書を確認するという行為が行われることがあります。
実際に、日本人旅行者の中には、以下のようなトラブルに巻き込まれた例があります。
- 夜間に車で外出していた際、警察の制服を着た人物に停止を命じられ、理由も説明されないまま数時間拘束された
- パスポートの提示を求められたが、コピーしか所持していなかったため、罰金を請求される
- 現地語(スワジ語)での対応に困り、言葉が通じないことを逆手にとって脅迫された
こうした事例では、法的な根拠が不明確なまま拘束されることが多く、旅行者にとっては非常にストレスの高い体験となります。
特に夜間や郊外での移動中には、こうした検問に遭遇する可能性が高まるため、以下のような対策を講じることが重要です。
- 夜間は極力外出を避ける(特に徒歩や配車アプリを利用しない移動)
- パスポート原本を持ち歩くか、滞在先で保管しつつコピーとホテル連絡先を常備する
- 身分確認には落ち着いて対応し、不明な点は無理に説明しない(英語が通じない場合はGoogle翻訳を活用)
加えて、一人での移動は避け、現地の信頼できるスタッフやガイドと行動することも、安全確保には有効です。
露出度の高い服装は“挑発的”とみなされるリスクがある
エスワティニ王国では、都市部こそ少しずつ西洋的なファッションが広がってきてはいるものの、地方や伝統的価値観の強い地域では、女性の服装に対する社会的な視線が非常に保守的です。
特に外国人女性に対しては、服装によって「軽率」「性的に開放的」と見なされることがあるため、注意が必要です。
実際、現地でトラブルにつながる可能性がある服装例としては、
- タンクトップやノースリーブで肩を出している
- 膝上の短パンやミニスカートを着用している
- 胸元の開いた服や、身体のラインが出るぴったりとした服
これらは、現地の一部男性にとっては「挑発」と受け取られることがあり、声をかけられたり、つきまとわれたりするリスクを高めてしまう原因になります。また、宗教的・文化的な価値観が強く残る場面(たとえば教会の近くや田舎の市場など)では、「敬意を欠いた外国人」という印象を与える可能性も否めません。
したがって、服装を選ぶ際には次の点を意識すると安全性が高まります。
- 半袖〜長袖のトップス(肩を隠せるストールを常備すると便利)
- ロングスカートやゆったりしたパンツ
- 透け感のない、落ち着いた色味の服
また、「民族衣装に近い色合いやデザイン」を少し取り入れると、現地の人々との距離感が縮まりやすく、好意的に見られることもあります。
エスワティニでは、“郷に入っては郷に従え”の姿勢がとても重要です。たとえ観光地であっても、現地の価値観に敬意を持った服装を選ぶことが、トラブル回避にもつながる賢い判断だと言えるでしょう。
リードダンスや一夫多妻制が示すように、性別役割が固定的

エスワティニ王国の文化や慣習を語るうえで避けて通れないのが、性別役割の固定観念が根強く残っているという現実です。
すでに触れたように、国王ムスワティ3世のように多くの妻を持つ「一夫多妻制」は制度として合法であり、それを当然の価値観として受け入れる社会が形成されています。
また、毎年数万人の未婚女性が参加する「リードダンス(Umhlanga)」という伝統儀式は、まさに女性の役割を象徴するイベントです。
これは若い女性たちが民族衣装をまとい、王に対して“純潔”と“奉仕の心”をアピールするという形式を持ち、女性の“社会的価値”を婚姻可能性に強く結びつける文化的象徴とされています。
こうした儀式が続く背景には、「女性は家庭に入る存在」「夫を支えるべき立場」という明確な性別観の差があり、これが一般的な日常生活にも色濃く反映されています。
たとえば、
- 多くの女性が政治・経済の意思決定の場に参加できていない
- 女性が男性に逆らうことが「非礼」とみなされる社会観
- 伝統的な村では、未婚女性が一人で旅をすること自体が奇異とされる
こうした文化的背景を知らずに旅をすると、外国人女性に対して不自然な視線や誤解を生むことがあります。
そのため、エスワティニを旅する際には、現地の伝統文化をリスペクトしつつも、自分の立場や距離感を明確に保つ態度が重要になります。
たとえば、リードダンスに観光客として参加・観覧する場合にも、写真撮影のマナーや振る舞いに気をつけることで、現地の人々からの信頼感や安心感を得られるでしょう。
よくある質問で「エスワティニ王国 やばい」を再確認

ここからは、「エスワティニはやばい」と言われる理由について、よくある疑問をQ&A形式で整理し、さらに深掘りしていきます。
旅行を検討している方や、現地の事情を知りたい方が実際に気になるポイントに絞って丁寧に解説します。
エスワティニ王国の危険度レベルはどのくらい?
日本の外務省が発表する海外安全情報では、2025年現在、エスワティニは「レベル1:十分注意してください」に指定されています。
これは「ただちに危険というわけではないが、軽犯罪や政治的な不安定性に注意が必要」というレベルです。
実際には、夜間の外出、政治デモ、地方の村落部などを避ければ、比較的安全に観光ができるエリアもあります。
ただし、何が起きてもすぐに対処できる医療・警察体制が整っていないため、小さなトラブルが大きなリスクに発展する可能性がある点には注意が必要です。
HIV感染の実態は?観光客に感染リスクはある?
前述の通り、エスワティニは世界でも最もHIV感染率が高い国のひとつです。
しかしながら、観光客が短期滞在中に感染するようなケースは非常にまれです。
感染リスクが高いのは、
- 性的接触(特に避妊具を使わない場合)
- 血液を介した処置(タトゥーやピアス、事故による処置)
- 医療機関での処置における衛生面の不備
などです。通常の観光旅行でこれらのリスクに触れることはほとんどありません。
それでも万一のトラブルや事故に備えて、海外旅行保険の加入と、現地では緊急連絡先の把握をしておくと安心です。
モノの値段や治安は?日本人旅行者は安全に過ごせる?
物価は比較的安く、ローカル食堂では1食200〜300円ほどで食べることができます。ただし、輸入品や外国人向けサービスは高く設定されている場合もあります。
治安に関しては、日中の市街地であれば基本的には大きな問題はありません。
しかし、夜間の外出や人通りの少ないエリアでは、スリ・強盗・詐欺といったリスクが高まるため、細心の注意が必要です。
また、日本人は「お金を持っている人」として見られがちなので、控えめな服装や態度を心がけることでトラブルを回避しやすくなります。
グレープフルーツを現地で食べても問題はないの?
これは意外とよくある質問ですが、結論から言えばグレープフルーツを食べること自体に問題はありません。
ただし注意したいのは、持病や薬の服用中の人です。
グレープフルーツは特定の薬(特に降圧剤や高脂血症薬など)の吸収を阻害したり、逆に効きすぎてしまったりする作用があるため、「グレープフルーツを避けるように」と医師から言われている人は、旅行中も注意が必要です。
現地の市場では新鮮な果物が安価に手に入りますが、衛生管理の面では自己責任が求められることを忘れずに。
まとめ|エスワティニ王国がやばいのは事実だが、旅行には問題なし
エスワティニ王国は、「やばい」と言われる要素をいくつも抱えた国であることは否定できません。
国家予算の私的流用、HIV感染率の異常な高さ、一夫多妻制に代表される性別役割の固定、民主化運動への弾圧、そして貧困による治安の不安定化——これらの現実は、観光ガイドブックには載っていないこの国の「もう一つの顔」です。
しかし同時に、旅人を歓迎するあたたかい文化と自然の美しさ、独自の伝統が息づく場所でもあるのです。
大切なのは、「知らずに行く」ことではなく、「知った上で準備し、注意しながら旅する」こと。
治安が不安定な地域を避け、現地の価値観に敬意を払い、服装や行動に気をつければ、エスワティニは旅行者にとって十分に訪れる価値のある国です。
特にアフリカの“伝統と現代が交錯する国”を体感したい人にとっては、唯一無二の体験が待っているでしょう。
“やばさ”を正しく理解し、対策を講じていけば、安全で実りある旅を実現できる場所。それが、エスワティニ王国なのです。
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