大自然と多文化が調和するカナダは、日本人にとっても人気の海外旅行先のひとつです。都市部では洗練された街並みと穏やかな人々が出迎えてくれる一方で、自然の中では野生動物と遭遇するスリリングな体験もできるなど、多彩な魅力を持っています。
しかし、そんなカナダでも、日本とは異なる文化やルールに無自覚なまま行動してしまうと、思わぬトラブルやストレスの原因になってしまうことがあります。
この記事では、
- カナダ旅行前に知っておきたい注意点
- 現地で“やってはいけないこと”
- 渡航に必要な準備・手続き
- 「カナダはやばい」と言われる背景
までをわかりやすく解説します。
カナダ旅行前に必ず知っておきたい7つの注意点

海外旅行ではどの国でも事前知識が重要ですが、カナダはその中でも文化の多様性と環境の厳しさが特徴的な国です。
旅行を快適に、そして安全に楽しむために、事前に押さえておきたいポイントを紹介します。
公共の場での大声や笑いはマナー違反とされることがある
カナダでは、静かな公共空間を尊重する文化が根づいています。
レストランやカフェ、交通機関の中では、必要以上に大声で話したり、笑い声を響かせることがマナー違反とみなされることがあります。
特に、日本人観光客の集団が「うるさい」と不満を持たれるケースもあるため、場の雰囲気に溶け込むよう心がけましょう。
カナダの消費税は州によって異なり、表示価格と異なることが多い
日本では税込価格が一般的ですが、カナダでは表示価格に税金が含まれていないことが多く、会計時に合計額が想像以上になることがあります。
また、州によって適用される税率も異なるため、オンタリオ州とブリティッシュコロンビア州では同じ商品でも支払う金額が変わるといった状況も起こります。
買い物の際は、表示価格だけで判断せず、レジでの金額確認を忘れないようにしましょう。
冬季の服装は防寒性能重視!都市ごとに寒さが大きく異なる

カナダの冬は、想像以上に厳しい地域が多く存在します。モントリオールやウィニペグといった地域では、気温がマイナス20度を下回る日も珍しくなく、防寒対策を怠ると外出すら困難になります。
防風性・保温性の高いアウターに加え、手袋・マフラー・防寒ブーツなどの装備は必須です。
一方で、バンクーバーなどの西海岸地域では比較的温暖で雪も少ないなど、都市ごとに気候が大きく異なる点にも注意が必要です。訪れる場所の天候を調べたうえで、適切な服装を準備しましょう。
無料トイレが少なく、事前に場所のチェックが必要
日本と違い、カナダでは公共の無料トイレが少ないため、観光中に「トイレが見つからない」というトラブルに直面することもあります。
特に都市部を離れた郊外や自然公園内では、商業施設の中にしかトイレがなかったり、有料トイレしか設置されていない場合もあります。
そのため、カフェやレストランに立ち寄った際には食事のついでにトイレを済ませておく習慣をつけると安心です。また、Googleマップで「washroom」や「public restroom」と検索すると、事前にトイレの位置を把握しやすくなります。
車社会のため、歩行者でも油断できない交差点がある
カナダは都市部であっても車社会の側面が強く、歩行者優先の意識が必ずしも高いとは限りません。
信号がない横断歩道で車が止まらない、見通しの悪い交差点での接触リスクがあるなど、日本とは異なる道路事情に注意が必要です。
特に冬季には道路が凍結していることもあり、ドライバーがブレーキをかけてもすぐに止まれない状況もあります。
道を渡る際は信号の有無に関わらず左右を確認し、アイコンタクトやジェスチャーで意思を伝えるなど、自衛意識を持った歩行が大切です。
マリファナが合法だが、使用エリアと所持制限に注意

カナダでは2018年以降、嗜好用マリファナの所持と使用が合法になりました。
ただし、使用できる場所には厳格な制限があり、公園や公共交通機関の近くなど多くの場所では使用が禁止されています。喫煙可能エリアと同様、周囲への配慮が強く求められます。
また、購入は政府認定のライセンスショップのみが認められており、年齢制限(州によって18〜21歳)もあるため、違反すれば罰金や拘束といった処分を受ける可能性もあります。
日本の法律でも帰国後に所持や使用が発覚すれば処罰対象となる可能性があるため、安易に手を出さないよう十分注意が必要です。
「ありがとう」や「すみません」は日本以上に多用される文化
カナダでは、“ポライトネス(礼儀正しさ)”が日常会話に深く根づいているため、ちょっとしたやりとりの中でも「Thank you」や「Sorry」を頻繁に使います。
たとえば、ドアを開けてもらった時やバスを降りる時など、日常のふるまいの中での“感謝や謝罪の表現”が非常に自然で重要とされています。
この文化に慣れていないと、無意識のうちに「ぶっきらぼう」と受け取られてしまうこともあるため、カナダ滞在中は意識的に“ありがとう”や“ごめんなさい”を多用することで、現地の人との距離がぐっと近づくはずです。
カナダで「やってはいけないこと」とは?

文化やルールが異なる海外では、「日本では当たり前」の行動が現地ではマナー違反や法律違反になることも珍しくありません。
カナダは比較的寛容な社会と思われがちですが、逆にその「寛容さ」を誤解したことで、トラブルに発展してしまう例もあります。この章では、旅行者が無意識のうちにやってしまいがちなNG行動について、注意点を具体的に解説します。
公共の場での飲酒・喫煙
カナダでは、公共の場でのアルコール飲酒や喫煙が厳しく制限されています。公園やビーチ、街中のベンチなどでの飲酒は州法によって罰せられる可能性があり、見つかった場合はその場で罰金を科されることもあります。
また、喫煙も同様で、建物の出入口から一定距離以内やバス停付近などは喫煙禁止エリアに指定されていることが多く、紙巻きタバコ、電子タバコのどちらも対象です。「屋外なら吸っていいだろう」と油断せず、必ず指定の喫煙場所で行うようにしましょう。
現地の人との距離感を無視した会話やボディタッチ
日本では親しみを込めて肩に触れたり、近距離で話したりする文化がありますが、カナダではパーソナルスペース(個人の距離)を非常に大切にする文化があります。
特に初対面の人に対して、ボディタッチや過度な質問をすることは失礼にあたることがあります。
例えば、年齢、宗教、収入、家族構成などを会話の中で尋ねることは、非常にデリケートな話題とされており、「なぜそんなことを聞くの?」と不信感を持たれることも。フレンドリーさと無礼さの境界を誤らないよう、注意が必要です。
人種・宗教・LGBTQ+に関する不用意な発言
カナダは多民族・多宗教・多様な価値観が共存する社会であり、ダイバーシティ(多様性)への配慮は極めて重要なマナーとされています。そのため、人種や国籍、宗教的な習慣、ジェンダーアイデンティティに関する発言には特に注意が必要です。
たとえ軽い冗談のつもりであっても、「その一言が差別にあたる」と受け取られてしまえば、トラブルや通報の対象となることすらあります。現地の文化や価値観を尊重し、「わからないことは聞かない」「踏み込まない」という姿勢が、安心して旅を楽しむための鍵となります。
横断歩道以外での道路横断(ジェイウォーク)

カナダの多くの都市では、信号のない場所や横断歩道以外で道路を渡る行為(ジェイウォーク)は違法とされています。特にバンクーバーやトロントなどの都市部では、警察官が観光客でも容赦なく取り締まりを行うケースがあり、罰金を科されることがあります。
州によって罰金の金額は変わりますが、大体100ドル以上と高額です。
「車が来ていないから大丈夫」という感覚で道路を横切ると、法律違反となるばかりでなく、事故のリスクも高くなります。信号や横断歩道をきちんと守ることで、安全と信頼を両立させることができるのです。
カナダ旅行に必要な事前手続きと基本準備

カナダはビザ不要で渡航できる国ではありますが、日本国籍の旅行者でもいくつかの重要な手続きや準備が必要です。
手続きを怠ると、最悪の場合は入国を拒否されることもあるため、確実な事前準備が安全でスムーズな旅行の第一歩です。
eTA(電子渡航認証)申請の手順と注意点

カナダへの飛行機での渡航には、eTA(Electronic Travel Authorization)=電子渡航認証の取得が義務付けられています。ビザとは異なり、オンラインで手軽に申請できますが、正規のサイトを利用しないと、申請代行業者による高額な請求やトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
申請にはパスポート情報、クレジットカード(支払い用)、メールアドレスが必要で、審査には数分〜数日かかることもあるため、フライト直前では間に合わない可能性もあります。申請が通った後は、登録したメールアドレスにeTAの承認通知が届くため、スクリーンショットや印刷で保管しておくと安心です。
パスポートの有効期限は入国時点で6ヶ月以上が安心
カナダ入国において、パスポートの残存有効期間に関して法的な明記はありませんが、航空会社や入国審査官の裁量によっては、滞在期間+数ヶ月以上の有効期限が求められることがあります。そのため、パスポートは出発前に必ず残り有効期間を確認し、できれば6ヶ月以上残っている状態が望ましいとされています。
万が一、旅行中にパスポートの期限が切れてしまった場合、現地での手続きは煩雑で時間がかかるため、事前の確認が旅のトラブルを回避する大きなポイントになります。
旅行保険・クレカ付帯保険の補償範囲を事前確認すること
海外旅行では、思わぬケガや病気、盗難に遭遇する可能性があります。特にカナダは医療費が非常に高額であり、ちょっとした診察でも数万円以上かかるケースも珍しくありません。そのため、旅行保険への加入は必須レベルの備えと言えるでしょう。

また、クレジットカードに付帯されている保険を利用する場合でも、補償範囲・補償金額・適用条件(例:旅行代金をそのカードで支払う必要がある)などの詳細を確認しておくことが重要です。「いざというときに使えなかった」では済まされない事態を防ぐため、事前に証券番号や緊急連絡先を控えておくと安心です。
「カナダはやばい」と言われるシーンは本当にある?
「カナダは治安も良くて安心」と思われがちですが、一部では“カナダはやばい”という声も確かに存在します。
実際に旅行者が危険を感じた体験談や、現地で起きた事故・事件を知っておくことは、冷静なリスク管理につながります。この章では、そうした“やばい”と感じられる具体的な状況について紹介します。
極寒地域での車移動中に遭難

カナダは広大な国土を持ち、地域によっては冬季にマイナス30度以下の極寒になる場所もあります。特にローカルな道を使って移動する際、猛吹雪やホワイトアウトによって方向感覚を失い、車ごと遭難する事故が毎年報告されています。
旅行者がレンタカーで移動中、携帯の電波が届かない・ガソリンスタンドが見つからないといった事態に直面し、最悪の場合は救助が遅れて命に関わるケースも。
防寒装備の不備や甘い見通しが、こうした“やばい”体験の引き金になるため、冬季の郊外移動には細心の準備と計画が必要です。
野生動物(ムース・クマ)との接触による事故や被害
カナダの自然には多くの魅力がありますが、そこにはムースやクマといった大型の野生動物が生息しているという事実もあります。ムースは体重が500kgを超えることもあり、道路に突然飛び出してきた際には車が大破するほどの衝撃を受けることも。
また、キャンプやハイキングの際にクマと遭遇して襲われる事故も、過去に何度も発生しています。食べ物の匂いが残っているゴミ袋や、開封したままの食料が誘因になることもあり、自然と触れ合う際には「野生動物との距離感」や「痕跡を残さない行動」が不可欠です。
メトロバンクーバーで報告されている軽犯罪の急増
「治安が良い」とされるバンクーバーですが、近年では軽犯罪の増加が社会問題として取り上げられています。特に公共交通機関の駅周辺や繁華街では、薬物中毒者によるトラブルや置き引き・スマホの盗難などが日常的に発生しています。
加えて、ホームレス人口の増加と経済的格差の拡大が、スリや強引な金銭要求といったストリート犯罪を助長している一因でもあります。観光地でも「安心しすぎない」意識が求められ、身の回りの持ち物を常に意識する姿勢が重要です。

まとめ|カナダ旅行を安全・快適に楽しむために必要な心構え
カナダは多様な自然と文化、そして人々の温かさにあふれる魅力的な国です。しかし、どんなに安全とされている国でも、旅行者が知らずにリスクを招いてしまうことは珍しくありません。そのリスクの多くは、文化的な違いや環境への理解不足、そして油断から生まれます。
たとえば、「ありがとう」や「すみません」といった日常のマナーが思いやりとして強く重視される文化。あるいは、都市によって異なる気候、公共の場での喫煙や飲酒に対する法的制限など、日本とは異なるルールが旅行者に問われる場面は数多くあります。
さらに、eTAの取得や保険加入などの出発前の準備を怠れば、現地でのトラブルだけでなく、最悪の場合は入国すらできなくなる可能性もあるのです。
「カナダはやばい」という声がある一方で、それらの多くは正しい知識と事前の心構えで十分に回避可能です。自然の中では野生動物との距離を保ち、都市部では人混みや深夜の外出に注意するなど、“知っていれば防げるリスク”に対して賢く行動することが、安全で充実した旅を叶える鍵になります。
海外旅行では、自分自身が“異文化にお邪魔している立場”であることを忘れず、現地のルールや価値観に敬意を持って行動することが、最高の思い出を作る第一歩です。きちんと準備し、適切に対処できる知識を身につけて、安心・快適なカナダ旅行をお楽しみください。