中東の中でも独自の魅力を持つイスラエル。
歴史ある旧市街や美しい地中海沿岸の都市は、多くの旅行者を惹きつけています。
一方で、紛争地域や緊張が高まるエリアも存在し、情勢の変化には注意が必要です。
本記事では、イスラエル旅行を検討する方に向けて、最新の治安情報や外務省の渡航勧告、入国条件をわかりやすく解説します。安全に旅を楽しむために、ぜひ参考にしてください。
【要注意】イスラエルで避けるべき危険エリアとは?

イスラエルには世界的に知られる観光名所が数多く存在する一方で、国境付近や一部の自治区には、旅行者が立ち入るべきではない「危険エリア」もあります。
紛争や軍事衝突のリスクが高いこれらの地域では、外務省をはじめとする各国の政府が退避勧告や渡航中止を呼びかけています。
現地の政治的・軍事的な動きは突発的に激化することがあるため、どんなに観光目的であっても十分な注意が必要です。
ガザ地区およびその周辺:退避勧告が継続中
イスラエル南部に位置するガザ地区は、過去数十年にわたりパレスチナ自治区とイスラエルとの間で激しい衝突が繰り返されてきました。ハマスによる支配が続くこの地域では、定期的にロケット攻撃や軍事作戦が発生しており、日本の外務省も「渡航は延期し、現地にいる場合は退避するように」との強い勧告を出しています。
ガザとの境界線近くに位置する都市や集落も、砲撃や空爆の対象になることがあるため、周辺地域を含めて立ち入りは避けるべきです。また、緊張が高まる時期には、一般市民や観光客が巻き込まれるリスクも無視できません。
レバノン国境地帯:ヒズボラとの緊張が高まる地域
イスラエル北部、レバノンとの国境沿いに位置する地域もまた、注意が必要なエリアです。この一帯では、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」とイスラエル軍との間で度々緊張が高まっており、国境を挟んだ小規模な衝突が突発的に発生しています。
特に、2023年以降はガザ情勢との連動もあり、国境地帯の警戒レベルはかつてないほど上昇しています。日本の外務省も「渡航中止勧告」レベルの警戒を発しており、観光目的での訪問は非常にリスクが高いといえるでしょう。
ヨルダン川西岸地区:一部地域で渡航中止勧告が発出中
ヨルダン川西岸地区(ウェストバンク)は、パレスチナ自治政府が統治するエリアとイスラエルによる実効支配が混在する複雑な地域です。ベツレヘムやヘブロン、ナブルスといった都市は歴史的・宗教的価値が高く、多くの巡礼者や観光客が訪れますが、一部の地域では治安が非常に不安定な状況が続いています。
特に、イスラエル入植地の周辺やパレスチナ住民との摩擦が激しいエリアでは、衝突や暴動が起こる可能性があり、外務省も「渡航中止勧告」または「渡航の是非を検討」といった警戒レベルを設定しています。移動の際は、観光ガイドや信頼できる現地案内人を通じて、安全が確保されたルートを選ぶことが重要です。
イスラエル旅行の現在の治安状況とは?

イスラエルは危険なエリアばかりではありません。
実際、都市部を中心に観光インフラが整っており、比較的安全に旅行ができる場所も多数あります。
重要なのは、どの地域が安定しており、どこが不安定なのかを正しく理解し、慎重に行動することです。ここでは、現在のイスラエル全体の治安傾向と、突発的リスクの可能性について詳しく見ていきます。

テルアビブやエルサレム中心部の治安は比較的安定
イスラエル最大の都市テルアビブ、そして宗教の中心地エルサレムの旧市街以外の中心部では、日常生活が安定しており、観光客も多数訪れています。
テルアビブではナイトライフが活気づいており、ビーチやショッピングエリアも賑わっています。エルサレムも歴史的建造物が立ち並び、昼間は多くの観光ツアーが行われており、警察や軍による警備体制も整っているため、表面的には非常に平和な雰囲気です。
もちろん、イスラエル全体が警戒態勢下にあるため、空港や駅、大規模施設では荷物検査や身分確認などのセキュリティが厳重に行われますが、これはむしろ治安維持のための努力がなされている証拠とも言えるでしょう。観光客が身の安全を守るためには、こうした手続きに協力的であることが大切です。
とはいえ、宗教的な行事や政治的デモが突如発生することもあるため、滞在中は常に現地のニュースやSNS、外務省の最新情報をチェックしながら行動するのが賢明です。
近隣諸国との関係悪化による突発的な衝突のリスク

イスラエルが抱えるリスクの一つに、周辺国との関係悪化が挙げられます。特にイラン、シリア、レバノンとの緊張関係は常に国際的な注目を集めており、軍事的な緊張が高まるたびに、イスラエル国内でも空襲警報が鳴ることがあります。
実際に、2024年にはイランとの間で軍事的な応酬が一時激化し、イスラエル北部では一般市民にも退避命令が出されたケースがありました。また、シリア情勢の不安定化により、ゴラン高原周辺でもイスラエル軍の警備が強化されています。
このような突発的な事態は予測が難しく、外見上は安全に見える都市部であっても、突然空港が閉鎖されたり、交通網が遮断されたりする可能性もあります。そのため、イスラエルを旅行する際は、万が一のための連絡手段や避難先を事前に把握しておくと安心です。
イスラエル入国は厳しい?最新の渡航条件を解説
イスラエルは中東の中でもセキュリティ対策が非常に厳格な国として知られています。
観光目的であっても、入国時のチェックは他国よりも時間がかかることが多く、事前準備が重要です。
ここでは、2024年以降に導入された新制度や、現在の入国条件について詳しく解説します。
電子渡航認証(ETA-IL)の導入とその影響
2024年、イスラエルは一部のビザ免除国に対して、新たに電子渡航認証システム「ETA-IL(Electronic Travel Authorization – Israel)」を導入しました。これは、アメリカのESTAやカナダのeTAに似た制度で、事前にオンラインで個人情報と旅程を登録し、許可を得た上で入国する必要があります。
日本はこの対象国のひとつであり、旅行者は渡航前に必ずETA-ILの申請を完了させる必要があります。審査は通常72時間以内に完了しますが、混雑時や内容によっては数日以上かかることもあるため、余裕を持った手続きを心がけましょう。
ETA-ILの導入により、入国前の審査が効率化された一方で、虚偽申告や不正な滞在歴がある場合には、認証が拒否されるケースもあります。過去に中東の特定国(特にイラン、シリア、レバノンなど)を訪れた履歴があると、より厳しい審査対象となる可能性があります。
入国審査でのセキュリティチェックの厳格化
イスラエルの入国審査は世界的に見ても非常に厳しく、テルアビブのベン・グリオン国際空港では、入国時に細かい質問を受けることが一般的です。「なぜイスラエルを訪れたのか?」「どの都市に滞在する予定か?」「イスラエル国内に知人がいるか?」など、プライベートに踏み込んだ内容を尋ねられることも珍しくありません。
また、荷物のX線検査も徹底しており、スーツケースの中身を開けられたり、身体検査が行われる場合もあります。これは、イスラエルが抱える治安上のリスクを背景とした措置であり、特定の国のパスポートやスタンプがある場合には、追加のチェックを受けることもあります。
観光客としては、これらの対応に冷静かつ協力的な態度で臨むことが大切です。セキュリティスタッフはプロフェッショナルに訓練されており、不審な行動を見せなければ問題なく通過できるはずです。
特定の国・地域からの入国禁止措置の現状

イスラエルは安全保障上の理由から、特定の国との関係を持たない、あるいは対立関係にある国々に対して、入国を制限または禁止しています。
特に、イラン、レバノン、シリア、イエメン、イラクなどに対しては、入国が原則として許可されておらず、これらの国のパスポート所持者はビザを取得することすら困難です。
さらに、これらの国に過去に渡航歴がある外国人に対しても、イスラエル入国時に厳しい尋問や入国拒否が行われることがあります。たとえば、パスポートにイランやシリアの出入国スタンプがある場合、それだけで追加のセキュリティ審査を受けることになるでしょう。
ただし、最近ではUAEやバーレーンなど、アブラハム合意を通じて関係改善を図る国も増えており、一部では緩和の動きも見られます。とはいえ、いずれにしても旅行前には最新の外交関係や入国条件を、必ずイスラエル外務省や大使館の公式サイトで確認するのが賢明です。
まとめ:イスラエル旅行を安全に楽しむためのポイント

イスラエルは、宗教・歴史・文化が複雑に絡み合う、唯一無二の魅力を持った国です。しかしその一方で、紛争地帯を抱え、情勢が急変することも珍しくないエリアであるため、旅行者には冷静な判断力と情報収集能力が求められます。
ガザ地区やレバノン国境、ヨルダン川西岸の一部など、立ち入りを避けるべき地域をしっかり把握し、外務省の危険情報を常にチェックすることが第一です。テルアビブやエルサレムの主要観光地は比較的安全ですが、デモやテロのリスクはゼロではありません。
入国時には電子渡航認証(ETA-IL)や厳格なセキュリティ審査があることを理解し、余裕を持ったスケジュールと正確な情報の提示が必要です。旅を安心して楽しむためには、「準備と自己防衛の意識」が何より重要なのです。
安全と計画を両立させれば、イスラエル旅行は深く感動的な体験となるはずです。万全の準備で、思い出深い旅にしてください。