中東の砂漠に広がる神秘の国、サウジアラビア。イスラムの二大聖地「メッカ」と「マディーナ」を擁するこの国は、近年観光政策を大きく変え、外国人旅行者の受け入れにも力を入れています。
でも一方で、「サウジアラビアって危ないんじゃないの?」「女性は行けるの?」「ルールが厳しすぎて無理そう…」と不安の声が多いのも事実ですよね。
確かに、サウジアラビアは独特の法律と文化、宗教上の厳格なルールによって、他の国とはまったく異なる旅のスタイルが求められます。でも実は、正しい知識と準備さえあれば、非常に安全かつ快適に旅ができる国でもあるんです。
この記事では、2025年最新版の情報をもとに、
- サウジアラビア旅行が「危険」と言われる理由
- 女性旅行者が気をつけるべきマナー
- 禁止行為
- ビザ申請方法
- 現地での振る舞い
まで、完全網羅でお届けします。
\ 海外の危険情報共有マップサービス /
サウジアラビア旅行が危険と言われる3つの理由

サウジアラビアが「危険」とされる背景には、単なる治安の問題だけでなく、文化的・宗教的なルールの厳しさや表現の自由の制限が大きく関係しています。
ここでは、その理由を一つひとつ深掘りしていきます。
東部州カティーフでは宗派対立による暴動の可能性がある
サウジアラビアの治安は国全体で見ると非常に良好です。しかし例外として、東部州のカティーフやその周辺地域では、宗派対立が背景にある暴動やデモが断続的に発生しています。
この地域にはシーア派住民が多く、スンニ派を国教とするサウジ政府との間で歴史的に緊張関係が続いているのです。2023年にも一部地域で警察と市民の衝突があり、一時的に外務省から注意喚起が出されました。
旅行者が巻き込まれるリスクは決して高くありませんが、不安定な地域に無意識に足を踏み入れるリスクを避けるためにも、事前に訪問地の安全情報を確認することは必須です。
表現の自由が厳しく制限されている国である

サウジアラビアは絶対王政の国家であり、国王や宗教、政府批判に関する表現は法律で厳しく取り締まられています。SNSでの発言や、旅行中の写真投稿などが、知らず知らずのうちに違法行為と見なされる可能性もあるため注意が必要です。
「こんなことぐらいで?」と思うような軽いジョークや、無邪気な動画が「国家に対する侮辱」と解釈されて拘束されるケースも過去には存在しました。これは、外国人であっても例外ではありません。
旅先で何気なくシェアする情報でトラブルにならないよう、投稿前に一呼吸置く冷静さと、言葉選びの慎重さが求められる国です。
公共の場での男女の接触や服装が厳しく監視されている
サウジアラビアはイスラム教の戒律に基づく社会制度を厳格に運用しており、公共の場での男女間の行動には非常に厳しいルールがあります。恋人や夫婦であっても、過度なスキンシップは慎むべきです。
また、女性の服装に関しては近年ある程度の自由化が進んだとはいえ、基本的にはアバヤと呼ばれる黒い長衣の着用が推奨されており、肌の露出は厳禁です。外国人女性でも現地の習慣に配慮することが求められ、違反すればモラル警察からの注意を受ける可能性があります。
こうした宗教的なルールを知らずに違反してしまうと、「危険な国だった」とネガティブな印象を持つ旅行者も少なくありません。つまり、“危険”というよりは、“知らなかった”がリスクを生む国なのです。
サウジアラビアで禁止されている4つの行為

サウジアラビアでは、イスラム教を国教とし、宗教的戒律(シャリーア)に基づいた厳格な法律が日常生活のあらゆる場面で適用されています。これらのルールは旅行者にも例外なく適用されるため、「知らなかった」では通用しないケースも多々あります。
ここでは、特に注意すべき代表的な禁止行為を4つ紹介します。
メッカ・マディーナへの非イスラム教徒の立入

イスラム教徒にとって最も神聖な場所であるメッカとマディーナの中心部(ハラーム地区)は、非イスラム教徒の立ち入りが法律で禁止されています。これは世界的にも有名な規制で、空港や高速道路の分岐点などには「Non-Muslims Not Allowed」の標識が出ているほどです。
間違えて立ち入った場合、逮捕・国外退去・再入国禁止といった重大な処分が下されることもあるため、決して軽視してはいけません。マディーナ市内は非イスラム教徒も一部入れますが、中心部の聖域には入らないように十分注意しましょう。
空港でのアルコール・ポルノ雑誌の持ち込みは禁止
サウジアラビアはアルコールが一切禁止されている国であり、酒類の販売も所持も違法です。これには空港の免税品で購入したお酒も含まれ、手荷物やスーツケースの中にアルコールがあるだけで処罰の対象になります。
また、日本では一般的に販売されているようなポルノ雑誌や露出の高い雑誌、成人向けコンテンツもすべて禁止対象です。中にはファッション雑誌ですら、「肌の露出が多い」「女性の姿勢が不適切」と判断されるケースもあり、税関で没収されることも。
サウジアラビアの入国時には、荷物チェックが非常に厳しく行われるので、「これは大丈夫かな?」と迷うようなものは持ち込まないのが一番安全です。
ラマダン中の飲食・喫煙は公共の場で禁止される
イスラム暦のラマダン(断食月)期間中、日の出から日没までの間、イスラム教徒は飲食・喫煙・水の摂取を控えます。旅行者には断食の義務はありませんが、公共の場で飲食や喫煙をすると、不敬行為とみなされて罰せられる可能性があります。
空港やホテルの部屋など、プライベートな空間では飲食できますが、街中や公園、ショッピングモールで水を飲んだだけでも注意を受けることがあるため、細心の注意を払いましょう。
一部のレストランでは日中も外国人旅行者向けに「カーテンを閉めて食事できる」エリアを設けているところもあります。とはいえ、ラマダン中の訪問には、現地の文化や宗教への最大限の敬意を示すことが大切です。
他宗教の布教行為やシンボルの所持も禁じられている

サウジアラビアでは、イスラム教以外の宗教活動が法的に制限されています。これは、布教活動だけでなく、十字架のペンダントや仏像、聖書などの宗教的なシンボルを公共の場で見せることすら禁止されている場合があります。
旅行者がこうした物を身につけていただけで入国時に問題になることは稀ですが、現地で人前に出す、広げる、配るといった行為は厳しく取り締まられる可能性があるため、注意が必要です。
特に複数名での宗教的な集会や祈りの行為は、宗教警察や治安当局からの介入を招く恐れもあります。宗教的な自由が保障されていない国であることを十分に理解し、内心の信仰と外面的な行動を分けて考える必要があります。
女性旅行者が気をつけるべき現地のルールとマナー
サウジアラビアでは、イスラム教の教義と文化が日常生活の中で非常に強く反映されています。そのため、女性旅行者には特に厳格なルールや社会的期待が課される場面があることを理解しておくことが大切です。
近年ではビザの緩和や観光の自由化によって、女性の一人旅も可能になっていますが、それでも日本や他の国と比べると、まだまだ“独自の制約”が多いのが現実です。
アバヤ着用は基本、スカーフも状況により必要
2023年以降、サウジ政府は外国人女性に対してアバヤ(全身を覆う黒いローブ)の着用を法的に義務付けてはいません。しかし、文化的・社会的な観点からは着用が強く推奨されており、実際に多くの外国人女性旅行者がアバヤを着ています。
特に保守的な地域や宗教施設に近づく場合には、アバヤの着用が事実上のマナーとして定着しています。スカーフについても法律上の義務はありませんが、公共の場ではスカーフを持参し、必要に応じて着用するのが安心です。
現地では、外国人観光客向けにおしゃれなアバヤやスカーフを販売している店も多く、伝統的なスタイルを自分らしく楽しむ旅行者も増えてきました。現地文化に敬意を示すという意味でも、アバヤを身に着けることは非常に有効なコミュニケーションツールとなります。
混合施設が少なく、女性専用エリアの利用が必要
サウジアラビアには、いまだに男女が分離された空間が多く存在しています。たとえば、
- レストランでは「ファミリーエリア」と「男性専用エリア」に分かれている
- 公園やショッピングモールにも「女性専用エリア」がある
- 公共交通機関にも「女性専用車両」が設けられていることがある
このような空間は、女性にとっては安全に落ち着いて過ごせる場とも言えます。ただし、ルールを知らずに男性専用エリアに入ってしまうと、周囲の視線や注意を受けることになるため、事前に掲示物や案内サインをよく確認しましょう。
また、ホテルのチェックインや観光施設の受付でも、男性スタッフに話しかける時には一定の距離を保ち、過度な接触を避けるのがマナーです。これは失礼というよりも、相手に気を使わせないという配慮の一部と考えると理解しやすいでしょう。
2025年時点のサウジアラビア渡航条件と入国手続き

サウジアラビアは、かつてはビジネスや宗教目的以外では入国が困難な国でしたが、「ビジョン2030」政策の一環として観光ビザ制度が導入されて以来、状況は大きく変化しました。2025年現在では、日本人も含めた多くの国籍の旅行者が、観光目的で比較的スムーズに入国できるようになっています。
とはいえ、ヨーロッパや東南アジアの国々とは違い、明確な渡航条件と書類準備が必要です。ここでは、その主なポイントを押さえておきましょう。
観光ビザはeVisaで事前申請が必要

現在、日本国籍者がサウジアラビアを訪問するには、「eVisa(電子観光ビザ)」の事前申請が必要です。この申請は非常に簡単で、公式ウェブサイト(https://visa.visitsaudi.com)を通じてオンラインで完了できます。
- 必要書類:有効なパスポート、クレジットカード(支払い用)、顔写真(パスポートサイズ)
- 有効期間:発行日から1年間有効で、最大90日間の滞在が可能
- 費用:おおよそ100〜130米ドル程度(ビザ料金+医療保険含む)
申請から承認までの時間は早ければ数時間、遅くても2〜3営業日以内には結果が通知されます。とはいえ、万一のトラブルに備えて、出発の1週間以上前には手続きを済ませておくのが理想です。
注意点として、到着時に空港でビザを取得(VOA)することはできません。
必ず事前にeVisaを取得しておく必要があります。
ワクチン接種証明と海外保険加入が推奨されている
2025年現在、サウジアラビアへの入国時において、新型コロナウイルスに関するワクチン接種証明の提示は“必須”ではないものの、一部の施設や都市間移動で提示を求められるケースがあります。そのため、できる限り最新版のワクチン接種証明書(英語またはアラビア語)を携帯しておくことが推奨されています。
また、eVisaには簡易的な医療保険が含まれているものの、カバー範囲は限定的です。万が一の病気やケガに備えて、日本での海外旅行保険にも加入しておくのが安心です。
特に以下の内容をカバーしている保険が望ましいです。
- 救急搬送・入院
- 感染症治療
- 傷害治療
- 損害賠償責任
- 荷物紛失や盗難対応
さらに、渡航先でトラブルが発生した際に、日本語で対応してくれるサポートデスクがある保険会社を選ぶと安心感が段違いです。
サウジアラビア旅行で気をつける日常の行動ルール

サウジアラビアに一歩足を踏み入れた瞬間から、日本や欧米の常識が通用しない場面が多くあることを実感するはずです。宗教や伝統に基づいた独自の規律が社会に深く根付いており、旅行者もその中で行動する必要があります。
そのため、以下のような日常的なルールや習慣をしっかり理解しておくことで、現地の人々と良好な関係を築き、トラブルを避けることができます。
金曜は休日、礼拝中は公共スペースも一時停止
サウジアラビアでは金曜日がイスラム教の安息日(Jumu’ah)とされており、この日は多くの商業施設が昼前から午後の礼拝時間帯まで一時的に閉まります。レストラン、カフェ、スーパーなど、ほとんどの場所が営業を一時停止するため、金曜日の午前〜午後2時ごろまでは計画的に行動することが求められます。
また、1日5回の礼拝時間(サラート)には、店舗や役所などの公共施設が数十分間クローズすることもあります。礼拝の際にはモスク周辺で騒がない、写真を撮らない、話し声を控えるなど、敬意を払った振る舞いが必要です。
旅行者だからといって特別扱いされることはなく、礼拝中は自分の行動も一時中断することが、現地の文化を尊重するマナーとされています。
写真撮影は政府施設や宗教関連で厳しく制限される
サウジアラビアでは写真撮影に関しても非常にセンシティブです。特に以下のような場所では、写真撮影が明確に禁止または制限されています:
- 政府機関・軍事施設・空港・警察署
- モスクや宗教施設の内部
- 女性や家族連れの一般人(無断撮影はトラブルの原因に)
例えば、「綺麗な建物だな」と思ってカメラを向けた先が実は宗教施設だった、警備員の目に留まった、通行人の女性が写っていたなど、思わぬことで注意を受ける場合があります。
インスタ映えや記念写真は旅の楽しみのひとつですが、シャッターを切る前に「この場所、撮って大丈夫かな?」と確認する習慣を持つことが重要です。
もし人物を撮影する場合は、必ず本人に許可を取りましょう。特に女性や子供の写真は絶対に無断で撮らないようにしてください。
現地の挨拶や振る舞いには敬意を払う必要がある
サウジアラビアでは、礼儀と敬意がとても重んじられています。現地の人々と接する際には、言葉遣いや態度、所作に十分注意を払うことが求められます。たとえば、
- 男性が女性に対して直接手を差し出して握手するのはNG。基本的には女性からの挨拶に応じる形を取るのがルール。
- 大声で話す、笑い声が大きい、威圧的な態度は無礼とみなされやすい。
- 足の裏を相手に向ける、モスクに入る前に靴を脱がないなど、身体の動作にもタブーがある。
挨拶の言葉として「アッサラーム・アライクム(平安がありますように)」と声をかけると、現地の人との距離もぐっと縮まります。たとえ短期間の滞在でも、その国の文化に敬意を表す姿勢は、安心して旅行を続ける最大の鍵となります。
まとめ:ルールを理解すればサウジアラビア旅行は安全に楽しめる
「サウジアラビアって危険なのでは?」
そう思っていた方も、この記事を通して“危険”とされる背景には、単なる治安の問題ではなく文化・宗教・法律に対する無知や誤解があることに気づかれたのではないでしょうか。
確かに、サウジアラビアには他の国ではあまり見かけない独自のルールや制約が多く存在します。表現の自由の制限、宗教に関する厳格なルール、男女の振る舞いや服装への規範など、日本とは異なる価値観の中で旅をするという点では、準備と理解が欠かせません。
しかし、しっかりとルールを学び、現地文化に敬意をもって接すれば、サウジアラビアは驚くほど安全で魅力的な国になります。
首都リヤドや歴史都市ジッダ、緑豊かなアブハー、絶景のアルウラーなど、見どころは尽きません。
何より、現地の人々は礼儀正しく親切で、「ようこそサウジアラビアへ」と笑顔で迎えてくれるホスピタリティも魅力のひとつです。
\ 海外の危険情報共有マップサービス /