南スーダンでは2025年から2026年にかけて、政府軍と反政府勢力の衝突が各地で拡大し、外務省は全土に「レベル4:退避勧告」を発出しています。世界で最も新しい独立国でありながら、なぜここまで治安が悪化してしまったのでしょうか。

出張や支援活動で南スーダンに行く予定があるが、本当に危険なのか知りたい!
ニュースで見る内戦のニュースの背景を理解したい!
そう感じている方も多いはずです。本記事では、南スーダンの治安悪化を招いている5つの理由を整理したうえで、外務省の最新の危険情報と、渡航・滞在にあたって取るべき安全対策を解説します。
南スーダンの治安が悪化している5つの理由


南スーダンでは、政治指導者間の権力闘争に加え、石油収入の減少、和平合意の停滞、地方での武力衝突、人道危機など複数の問題が同時に進行しています。
ここでは、現在の治安悪化につながっている主な5つの要因について詳しく解説します。
① キール大統領派とマチャル第一副大統領派の権力闘争
最大の要因は、サルバ・キール大統領派とリエック・マチャル第一副大統領派の対立です。
2025年3月、キール大統領はマチャル氏を反逆罪などの容疑で自宅軟禁下に置きました。
この措置の背景には、キール氏の健康悪化に伴う後継者争いがあるとみられており、マチャル氏の拘束をきっかけに支持者らが蜂起し、新たな反政府武装勢力が各地で形成されています。
両者は2018年の和平合意のもとで暫定統一政府を運営してきましたが、この拘束によって対話の枠組みそのものが機能不全に陥りました。
② 石油パイプライン破裂による経済破綻
2024年2月、隣国スーダンを通る石油パイプラインが内戦の影響で破裂し、南スーダンの主要な外貨獲得源が絶たれました。
石油収入は国家歳入の大半を占めていたため、この事故により国家収入はおよそ7割減少したとされています。
財政基盤を失った政権は軍や治安部隊への給与支払いにも支障をきたし、統治の安定よりも権力の集中を優先する動きを強めたことが、対立の激化に拍車をかけました。
③ 2018年和平合意の形骸化


南スーダン内戦(2013年〜)を終結させた2018年の「南スーダン紛争解決に関する再活性化合意(R-ARCSS)」は、統一軍の編成や憲法制定、選挙実施など複数の移行プロセスを定めていました。
しかし、統一政府の解体や重要な工程の先送りが繰り返され、合意は事実上、形骸化しています。
2026年12月に予定される選挙をめぐっても、移行任務のさらなる延期が一方的に提案されるなど、双方の不信感は解消されないままです。
④ 地方での武力衝突とコミュニティ間対立の拡大
とりわけ深刻なのがジョングレイ州です。政府軍と反政府勢力の衝突により28万人以上が避難したとされ、空爆や人道支援へのアクセス制限も報告されています。
国連の集計によれば、2026年1月から3月だけで206件の紛争関連事件が発生し、1,388人の市民が影響を受け、767人が死亡しました。
政治対立に加え、民族・コミュニティ間の資源をめぐる衝突が並行して発生していることが、被害をさらに拡大させています。
⑤ 人道危機とコレラの流行
治安悪化は人道状況の悪化とも密接に結びついています。
2026年6月から9月にかけては、およそ900万人が食料支援を必要とする水準にあり、一部地域ではカタストロフィック(壊滅的)レベルの食料不安が予測されています。
加えてコレラの流行も拡大しており、2026年7月時点で10万件を超える患者と1,700人以上の死者が報告されています。
医療・衛生インフラの崩壊が、治安悪化による人の移動や避難とあいまって被害を深刻化させている点にも注意が必要です。
外務省の危険情報から見る南スーダンの現状


外務省の海外安全ホームページでは、南スーダンの全土に危険情報「レベル4:退避勧告」が発出されています。
ジュバ国際空港を中心とした首都ジュバ市及びその周辺についても同様にレベル4に引き上げられており、「渡航はどのような理由であれ止めてください。
また、既に滞在されている方は直ちに退避してください」と明記されています。
2025年3月以降、キール大統領派とマチャル氏派の対立が上ナイル州で武力衝突に発展したのに加え、首都ジュバ近郊でも複数の衝突が発生しており、外務省は情勢が今後さらに悪化するリスクを継続的に注視しています。
南スーダン情勢の背景にある構造的な問題
南スーダンの治安悪化は、単発の事件ではなく構造的な問題の積み重ねによるものです。
- 独立後も続く民族・地域対立:2011年の独立以降、複数の民族集団間の対立が繰り返し武力衝突に発展してきた歴史があります。
- 石油依存経済の脆弱性:国家財政の大半を石油収入に依存しているため、パイプライン事故や国際価格の変動が即座に政治的な不安定化につながります。
- 統治機構の未成熟:独立から日が浅く、軍・警察を含む治安機構が政治権力から十分に独立していないことも、対立が武力衝突に発展しやすい要因となっています。
これらの要因が重なり合うことで、和平合意が結ばれても長期的な安定にはつながりにくい状況が続いています。
渡航・滞在にあたっての安全対策


現在の南スーダンは通常の海外旅行先として渡航できる状況ではありません。
原則として渡航を避けることが最も重要ですが、業務や支援活動などでやむを得ず滞在する場合に備え、確認しておきたい安全対策をまとめます。
渡航は原則中止、滞在中の方は退避を検討


外務省が全土にレベル4(退避勧告)を発出している以上、南スーダンへの新規渡航は業務・支援活動を含めて見合わせるのが原則です。既に滞在している場合は、安全が確保されているうちに退避手段を確保することが強く推奨されます。
最新の危険情報をこまめに確認する
現地情勢は数日単位で変化する可能性があります。外務省海外安全ホームページの「たびレジ」に登録し、在留届を提出したうえで、大使館や信頼できる現地情報源からの最新情報を継続的に確認しましょう。リスクメイトのような危機管理サービスを活用し、地域ごとのリスク評価を定期的にチェックすることも有効です。
やむを得ず滞在する場合の行動指針
業務上どうしても滞在が避けられない場合は、以下の点を徹底してください。
- 移動は最小限にとどめ、日没後の外出は避ける
- 衝突が報告されている地域(ジョングレイ州、上ナイル州、ジュバ近郊など)には近づかない
- 緊急連絡網と退避ルートを事前に複数確保しておく
- 現地の治安情報に精通した専門家・現地スタッフと密に連携する
まとめ|南スーダンの治安悪化は複合的な要因の結果
南スーダンの治安悪化は、①大統領派と副大統領派の権力闘争、②石油パイプライン破裂による経済破綻、③和平合意の形骸化、④地方での武力衝突拡大、⑤人道危機の深刻化という複数の要因が絡み合って生じています。外務省は全土に退避勧告を出しており、現時点で渡航のメリットがリスクを上回る状況にはありません。
現地との関わりがある方は、最新の危険情報を継続的にチェックし、専門家の知見も活用しながら、冷静かつ慎重にリスクを判断することが求められます。
(本文中の情報は執筆時点のものです。最新の状況は外務省海外安全ホームページ等で必ずご確認ください。)










